木から電池をつくる
里山問題の解決と持続可能な社会の実現
21世紀に入り、我が国はもとより世界的に持続可能な社会の実現が喫緊の課題となっています。株式会社里山エンジニアリング(創業:2022年、本社:宮城県、以下同社)は、その答えの一つが日本の伝統と先端技術の融合にあるとして、江戸時代の循環社会の精神を受け継ぎ、最先端の工学と里山の自然資源を組み合わせることで、新たな循環型社会の礎を築いていくことを目指しているそうです。
現時点に於ける具体的な活動として、我が国の約4割を占める里山の木材や微生物などの資源を活用し、林業の再興や伝統技術の継承を促進するそうです。地域ごとの独特な技術を再評価し、持続可能で独自のモノづくり大国、日本の再興を目指すとのこと。また、地域との連携を深め、ものづくりの場を解放し、地域住民の創作の機会や技術リテラシーの向上に貢献して行くそうです。
同社活動の中で、当サイトANSListsが注目したのは同社によるウッドバッテリーの開発です。近年、里山の手入れ不足が深刻化し、二酸化炭素吸収量が減少、生物多様性の低下、ナラ枯れなどの問題が発生しています。そしてまた、従来、熱エネルギー源として利用されていた里山薪炭林を現代の暮らしの中で積極的に活用する機会も減少しつつあります。そこで、里山の森林維持と電気エネルギーの利活用を両立させるという目的で、薪炭林を蓄電池の材料として活用するウッドバッテリーが開発されたそうです。ウッドバッテリーは、東北大学で長年研究されてきた「両有機レドックス電池」の技術を基盤としているとのこと。文字通り木材を原材料として使用する蓄電池、その容量は鉛電池と同等、1,000回の充放電後も95%の容量を保持、高速充電を可能とし、電極に金属など枯渇しつつあるような他の自然資源を使用しないため環境負荷が低く循環型社会に適していると言えるようです。他方、里山資源の適正な管理を促進することにより、地域林業の再興、萌芽更新による木々の再生、生物多様性の回復、CO2吸収量の増加、中山間地域における雇用の創出、小規模エネルギー分散社会への貢献、などの効果を生み出せそうです。
ウッドバッテリーは、「安価で・安全な・環境に優しい」蓄電池として、将来的には地域の木材を活用した地産地消型のエネルギーシステムを構築する可能性を秘めていると言えそうで、里山問題の解決と持続可能な社会の実現に貢献する可能性を秘めた革新的な技術ですね。 今後の研究開発の進展と普及促進に期待が高まります。同社には大きく飛躍して頂きたいとの思いをこめて、今後のご活躍を心より祈念致しております。(AS)
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